中国・台湾の作家十七人の作品を一作ずつ収録した本書は,華文SFの紹介・普及に精力的に取り組んできた立原透耶の選によるもの.待望の日本独自編纂であることに加え,時代・性別・作風について幅広く選出されていることによって,これまでに日本に多く紹介されていたハードSF・東洋的作品だけではない,百花繚乱の中華SFの世界を概観できる.例えば,宇宙飛行士養成学校が舞台のレトロな宇宙SF&成長譚である江波「太陽に別れを告げる日」,アラビアンナイトを彷彿とさせるファンタジイの飛氘「ものがたるロボット」や韓松らしい不条理とグロが炸裂した「地下鉄の驚くべき変容」,惑星間婚活の人情噺&ジェンダーSFの凌晨「プラチナの結婚指輪」を挙げるだけでも,その多様さの片鱗がうかがえる.この本を読めば,きっとそれまでに出会ったことのない新しいSFと出会うことができるだろう.中華SFに対する印象もきっと大きく変わるはずだ.
本稿は《SFマガジン》2020年12月号(2020.10)に掲載された書評の再録である.