劉慈欣『三体』


書誌情報


書評

文化大革命で父を喪った科学者の抱いた人類への絶望を発端に,理論物理学者たちの連続自殺や視界に映り込む謎のカウントダウンなど,なんとも気になるサスペンス的展開を経てついに明かされるのは,なんと宇宙人が地球に攻めてくるなどというあまりにもシンプルすぎて逆に驚くくらいのSF的展開.しかしながら,そのSFド直球の題材を現代科学や“三体ゲーム”という魅力的なガジェット,そして凄惨極まる文革の描写などで大胆かつ緻密に彩ったことによって,SFの持ちうる魅力を最大限引き出している.たしかに荒唐無稽ではあり,物理学的な突っ込みどころも少なくないものの,それ以上に次から次へと新しいものが飛び出てくるのが面白くてどんどん先が読みたくなるので問題なし.さらに驚くべきは,本作が三部作からなる大長編のほんの序章に過ぎないということ.まだ読んでいない方にも,ぜひこの機会に読みはじめていただきたい.


書評メタデータ

本稿は《SFマガジン》2020年12月号(2020.10)に掲載された書評の再録である.


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