カート・ヴォネガット・ジュニア『バゴンボの嗅ぎタバコ入れ』


書誌情報


書評

23編を収録した初期短篇集.SFっぽい作品は2篇だけと少ないものの,“小説家の仕事の実習”とは思えない出来栄えの作品が並ぶ.作品全体を貫く古き良き倫理観や,時折色濃く浮かび上がる戦争体験など,古風な魅力はありつつも古びてはおらず,七十年もの時を超えて当時のアメリカの雰囲気を存分に感じとることが出来る.これらアメリカ雑誌黄金時代の短篇を読み,当時の読者の“仏教的瞑想”の追体験をする(ヴォネガット曰く,短篇小説を読むことは仏教的瞑想に等しい)のも面白い.

しかし,もしかすると,本書で一番注意して読むべきなのはまえがきの“短篇小説八つのルール”かもしれない.ヴォネガットが自ら明かす短篇小説のコツは,読み手・書き手のどちらにとっても極めて有用だ.収録作では「記念品」がその好例となるだろう.


書評メタデータ

本稿は《SFマガジン》2022年12月号(2022.10)に掲載された書評の再録である.


書評一覧に戻る

トップに戻る