川端康成「片腕」


解説

解説しようと思うのだが,新潮文庫版の巻末に収録されている三島由紀夫による解説がすべて語りつくしてしまっているので,作品自体の解説はそちらを読んでいただきたい.

私の方では,私自身がこの作品を読みきっかけになった,筒井康隆による書評を抜粋して紹介したい.

「新感覚派の面目躍如たる発端であろう.だがここまでならファンタジイずれしているぼくにとってさほどの話でもない.感心したのはシュール・リアリズムを日本の感性で書いていることである.また特に驚いたのは,心おどりに上気しながら娘の右腕を雨外套のなかにかくして,もやの垂れこめた夜の町を歩く『私』に,近所の薬やの奥から聞こえてくる以下のラジオの天気予報だった.(引用部略)さすが東京帝國大學文學部,シュール・リアリズムの精神をよくぞここまで日本に写し変えたものだと僕は嘆息した.現実と非現実すれすれのはざまで勝負していて,踏み出し過ぎることがない.」


所感

上述の筒井康隆による書評を読んで,非常に気になったので読んでみた.すると『片腕』がとんでもない名作だったのであった.

名作すぎて周囲の人手当たり次第に話をして多大な迷惑をかけることになった.特に某会長に対しては何度同じ話をしたかわからない.それでも,一度読んでもらえれば,私がそのような奇行に走った理由というのも納得していただけると思う.

この作品自体も素晴らしいが,この作品の評価の半分ほどは,解説の三島由紀夫の文章にあると思う.解説者を知らずにこの解説を読んだ時,「これほど格調高く,適切にこの小説の本質を言い表しているとは,なんという天才だ.これほどの天才批評家がいれば日本文学は安泰だ」と感じて,その天才の名前を確認したら三島由紀夫だった.そりゃそうだというもので,なぜあんなにも早くに死んでしまったのか,残念でならない.


余談

紙面が余ってしまったので,部会主催者の強権を発揮して私のSF短篇ベスト10について記したいと思う.

  1. 片腕 川端康成
  2. 処刑 星新一
  3. 生活維持省 星新一
  4. 母子像 筒井康隆
  5. くだんのはは 小松左京
  6. 地には平和を 小松左京
  7. 殉教 星新一
  8. 給水塔の幽霊 筒井康隆
  9. 鞄 安部公房
  10. 最後にして最初のアイドル 草野原々

どれも傑作だが,特に推したいのは小松左京「くだんのはは」「地には平和を」,筒井康隆「給水塔の幽霊」.


本稿は東北大SF研wikiから保存した.保存にあたって,表記の統一のため,一部修正を行なった.


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